「スイス製」のステータスは揺るぎないものですが、近年、イギリス時計産業は目覚ましい躍進を遂げています。その象徴とも言えるのが、今年初めて開催される「英国時計職人デー」です。まるでイギリス版「ワッチズ＆ワンダーズ」のようなこのイベントは、40を超えるブランドが参加し、イギリス時計業界の底力と未来への可能性を強く示唆しています。
それでは、今回注目すべきイギリス時計ブランドとその新作を見ていきましょう。
1. ウィリアム・ウッド (William Wood)：ユーモアを込めた革新
ロレックスのデイトデイト プズルやコンスタンティン シャヨタキンなど、独創的な腕時計は数多くありますが、消火ホースを素材に使用した時計は見たことがあるでしょうか？ ウィリアム・ウッドは、消火活動に敬意を表し、廃棄された消火ホースを斬新な素材として採用しています。今回発表された「ファイヤー・エキジット・ウォッチ」は、曜日表示窓に「月曜日は遅刻」「日曜日は二日酔い」といったユーモア溢れるデザインを採用し、安全とスタイル、そして皮肉を融合させた独創的な作品です。限定300本のみの生産です。
2. ロジャー・W・スミス (Roger W Smith)：伝説の継承者
伝説の時計師ジョージ・ダニエルズの唯一の弟子として、ロジャー・W・スミス氏は現代を代表する時計師の一人です。今回、彼は「英国時計職人デー」で初となる快挙を成し遂げます。2021年からオーダーブックが閉鎖されていたシリーズ1ですが、今回特別に1本が即売で購入可能となります。これは業界全体にとっても重要な出来事であり、消費者がすぐに手に入れることができる希少な機会となります。
時計評論家・愛好家であるロブ・ナッズ氏は次のように述べています。「故ジョージ・ダニエルズの偉大な遺産を継承することは容易ではありませんでした。それを発展させることはさらに難しかったでしょう。しかし、ロジャー氏はまさにそれを成し遂げました。私たちは継承と同時にさらなる高みへの到達を目の当たりにしているのです。ロジャー・W・スミス氏は、間違いなく同世代で最も重要なイギリス人時計師の一人として名を馳せることになるでしょう。」
3. ミスター・ジョーンズ (Mr. Jones)：ストーリーを伝える時計
2007年以来、時計デザイナーのクリスピン・ジョーンズ氏は、独創的な時計づくりを通して業界に革命を起こそうとしています。「子供の頃、時計を分解したりはしませんでした。私はもともと芸術家としてのキャリアをスタートしたのです」とジョーンズ氏は語ります。「私たちは、物語を語り、時間を楽しむことを思い出させてくれるユニークな時計を作ります。それぞれの時計には独自のストーリーと時刻表示方法が込められています。」
その代表例が「インデファティガブル スフィンクス」です。イギリス人アーティストのエドワード・カルヴァーリョ＝モナハンとのコラボレーションにより、夢のようなキャラクターやオブジェクトが並ぶシュールな風景が描かれた文字盤は、ミスター・ジョーンズがこれまでに生み出した作品の中でも最も技術的に挑戦的なもののひとつです。
4. クリストファー・ワード (Christopher Ward)：伝統への敬意
イギリスブランドのクリストファー・ワードは、昨年のGPHGアワード（時計業界のアカデミー賞）で世界的な認知度を高めました。今回、同ブランドは受賞した41mmの「ベルカント」に、鮮やかなブルーのレーザーエッチングによるユニオンジャックを文字盤に配しました。「この非常にイギリス的なベルカントは、新しい領域を切り開き、コレクションの今後の発展への展望を示唆しています」とCEO兼共同創業者のマイク・フランス氏は語っています。
